第2話 僕の小さな野望

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「お願いを、聞いて貰えますか?」  僕は、もう一度ゆっくりと問うた。 「何を企んでいるんだ?」  クロードの目が僕を咎めるように見る。  その問いかけはあながち間違いではない。そう、僕は企んでいる。それは間違いない。 「このことを、黙っていて欲しいんです。王子に伝えないで欲しい。……もちろん、分かってます。あなたは王族に忠誠を誓っている。僕の土下座なんかより、そちらの方が重い。しかも、あなたは僕が、嫌いだ。僕の願いをきく理由もない」  僕は、頑張ってクロードを見た。土下座の体勢からのこの角度はキツイ。手をしっかりと床につけておかないとバランスを崩して倒れてしまいそうだ。 「……そうだな」  クロードの低い声が僕に刺さる。 「それでも、僕はあなたしか頼る人がいないんです。このお願いを聞いて貰えるなら、僕は王子の婚約者を辞退して、あなたの前から永遠に消える覚悟があります」  僕がそう言うと、クロードの眉がピクリと動いた。 「どういう意味だ」  僕は喉がなった。ついに本題を話す。 「まず、僕は来月から始まる学園に通うつもりはありません」  クロードの表情は崩れなかった。ただ、その目力が増した気がする。 「学園を卒業して成人の資格をえる。そして社交界にデビューする。つまり、学園を卒業しなければ成人の資格が与えられない。僕が学園に通わなければ、卒業出来ない。そんな僕は王子の婚約者として相応しくないでしょう?」 「そんなことができるのか?」  クロードが聞いてきた。 「現にいま、僕はここにいる。学園に通うための準備を何もしていない。養生のためとしているから、入学式の日が来ても、首都に戻らなければ入学は認められないはずです。体調不良で入学式を欠席しても、首都に在住していれば許される。けれど、僕はここにいる」  クロードが僕を睨むように見ている。  僕の言わんとしていることがわかったようだ。 「だが、いずれは首都に戻るだろう?」
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