第2話 僕の小さな野望

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 そう、養生が終わって首都に戻ればすぐに学園に通わされるに違いない。学園に通うことは貴族としての嗜みで、成人に必要な知識と社交性を育むのだ。 「戻りません。絶対に一年はここに留まるつもりです。学園に通うべき年に養生のためと首都を離れて、一年も姿を見せなければ、そんな婚約者は排除すべきと周りが口にするはず」  僕の簡単な計画を口にした。  まぁ、僕は男だから子どもを産むわけじゃないので病弱とかはマイナスに働かないんだけど、正妃として外交なんかに顔を出すには、病弱はマイナスに働くと思うんだよね。それに、僕のうち伯爵家だし、侯爵家辺りが王子の婚約者の立場を狙ってくると思うんだ。 「別に子ども産むわけでもなければ、病弱は理由にならないだろう。あくまでも家の繋がりを重視している婚約のはずだ」 「だったら、なんで、僕?伯爵家だよ?しかも、こんなデブ、性格も悪い。なんのメリットがあるって言うのさ」  僕は思ったままを口にした。 「それは、俺も思うところがあるが…俺等には理解できないなにかがあるのだろう」  クロードは唇を強く引き結んだ。  クロードだって、僕が王子の婚約者であることを本当は理解なんてしていないのだ。 「でも、王子だって僕が婚約者であることを嫌っているよね?」  僕がそう言うと、クロードの目が見開いた。 「なぜ、そう思う?」 「なぜ?だってそうでしょう?僕が階段から落ちて五日間も意識が戻らなかったのに、王子からはお見舞いもなくて、今回僕が領地に養生に行くと言っても見送りもしてくれないどころか…クロード、あなたに伝言のひとつもないのでしょう?」  僕がそう言うと、クロードは目を閉じてゆっくりと深呼吸した。何を言うのか、なにか考えがあるのか。もしかすると、僕に内緒でなにか言われているのかもしれない。 「分かってる。あなたは王族に忠誠を誓っている。僕に内密になにか言われているのだとしたら、それは僕の土下座なんかより遥かに重い。けれど、王子から、僕に何も伝言を受けていないの事実でしょう?王子は婚約者である僕のことなんて、これっぽっちも気にかけていないんだよね。ただ、僕のわがまま聞いてあなたを貸してはくれたけど、それは婚約者である僕の身辺警護の為だけだ。いや、ある意味僕の監視の為なんでしょうね」  僕がそう思いを話すと、クロード深いため息をついた。当たらずとも遠からず、なんだろうか? 「それで、俺にお願いというのは、お前が学園に通うつもりがないことと、王子の婚約者を辞退したい。このことを黙っていて欲しいということでいいのか?」  クロードが話をまとめようとしている。  めんどくさいんだろう。嫌っている僕の相手をするのが。 「はい。それと、もうひとつお願いがあります」  これこそが本題だ。 「なんだ?」  クロードは、いかにもめんどくさいと言う顔をした。 「僕に剣を教えてください。それと勉強。あなたは学園を首席で卒業したと聞いています。僕は一年はここに留まるつもりです。あなたに一年もここにいてくれとは言いません。基礎を教えて欲しい。せめて半年、3ヶ月でもいい」  僕は再び額を床に擦り付けた。
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