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第3話 僕の王道計画
で、僕は早速領地の屋敷を、取り仕切る執事の所へ行った。ここの執事は以前は首都の本宅で執事を行っていた人物だ。とても優秀な人で、僕が幼い頃にこちらに移動してしまったのだ。だから、随分と久しぶりに会う。
「これは、フィンリィ坊っちゃま」
執事は僕を見てゆっくりと頭を下げた。記憶にあるより、少し白髪が増えたように見える。
「久しぶりだね、ジェス」
僕はジェスの手を握る。ぶよぶよな僕の手と違い、ジェスの手は少し骨ばっていて、よく働く男の感じがした。
「こちらにはご養生に、こられたとお聞きしましたが?」
ジェスは僕のことを満遍なく見て、首を傾げた。うん、どこをどう見ても僕が病気には見えないよね。
「うん、ダイエットしようと思って」
僕がサラリとそう言うと、ジェスは驚いていた。
「だ、ダイエット……に、ございますか?」
ジェスは心底驚いたようだ。
まぁ、僕の姿を見て、ダイエットなんて土台無理な話だと、誰もが思うところだ。何しろわがまま放題に育てられたから、好きなものを食べたいだけたべて、遠慮なんてしない。もちろん、社交界に必要なダンスなんで踊れるわけもない。
ジェスからしたら、最後に見た僕の姿から、こんな白豚になるだなんて、想像もしていなかっただろう。これが王子の婚約者なんて、信じられないに違いない。
「知ってると思うけど…僕は、ほら」
「はい、存じておりますよ。フィンリィ坊っちゃまは王子の婚約者でしたね。確か、今年は学園に入学されるお年だったと記憶しておりますが?」
さすがはジェス。
「うん、そうなんだけど、さぁ…こんななりじゃ恥ずかしくて学園に通えないじゃない?」
僕がそう言うと、ジェスは改めて僕のことを頭のてっぺんからつま先まで眺めた。顔には出さないけれど、目が納得している。
「僕と、黒騎士のクロード様がしばらく滞在しても問題はないよね?」
僕がそう聞くと、ジェスはニッコリと微笑んで頷いた。
「それとね、ほら、ダイエットって結構時間がかかるじゃない? 学園に入学するまでに間に合わないと思うんだよね? それでさぁ、僕に勉強を教えてくれる家庭教師、雇えないかなぁ?」
学園に通う代わりに雇う家庭教師ともなれば、それなりの給金の支払いが発生する。下手をすれば住み込みだ。それだけの費用が捻出できるかどうか、執事のジェスにお伺いを立てていると言うわけだ。
「もちろん、坊っちゃまのためでございます。そのくらい問題ございません。すぐにでも家庭教師を探しましょう」
ジェスは 快諾してくれた。領地の屋敷も財政は良好のようだ。多分だけど、ジェスは僕が王子の婚約者に相応しい人物になるためにここに来たと勘違いしてくれているのだろう。申し訳ないけれど、真実を話すつもりは無い。
ジェスにとって、いや、この屋敷で働く使用人たちにとっては、僕は王子の婚約者。自慢の坊っちゃまなのだから。
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