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あの日も金曜日。
いつも通りにシフトに入って、お客さんにメニューを聞いて、料理を運んで。
いつもと同じ金曜日だったけど、強いて違うことをあげるなら、彼女と喧嘩してむしゃくしゃしていたことくらいだ。
俺の彼女の咲季は、同じ美大生に通う2年生。
美少女に入るタイプの彼女は学内でも有名らしい。
彼女の肩を流れるサラサラなロングヘアが彼女の小顔を引き立たせていて、細過ぎない身体が健康的で大学中の男性を虜にしていると友人たちが騒いでいた。
そんな彼女がなぜ、平凡の中のど平凡な俺なんかを選んだのかは今でも謎ではあるが、彼女曰く『私にはないその平凡さが可愛いから。』とか言っていた。
ハイスペックな奴の考えは、やはり俺には理解不能だ。
周りからは憧れのマドンナのように崇められている彼女も、俺からすれば自己愛が強いただの女の子である。
最初はただ、気も合うし他の女の子みたいに俺がどこで何をしていても束縛しない、そんな彼女の気さくさが好きで付き合うようになったけど、最近では彼女の自己主張が激しくなるばかりで俺は少しだけうんざりとしていた。
例えば、食事1つにしても俺の好みは全く無視する日もあれば好きにしてっていう日もあるし、彼女好みの洋服を着せたい日があればどうでもいい日もあって、彼女の気分に振り回されることに少々疲れ始めていたのは事実だ。
だからきっと俺は、疲れていたのだ。
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