猫を助けて死ぬとかベタではなく稀有な体験だよね

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魔塔主ノード。長い黒髪にシャープな顔立ちのイケメンは黒に近い濃紺のローブをはおっている。彼の目が見開かれ、何か信じがたいものを見た顔で二三度まばたきした。まあ、幽霊を初めて見たにしては反応が薄めな方かもしれない。魔塔主なら悪魔とか精霊とか亡霊とか色々見たことがあるはずだし。 「ノード?」 ナリッサが訝し気にノードの顔をのぞきこみ、そのあと彼の眼差しが向かっている先、つまりあたしに目を向ける。けれどナリッサと目が合うことはなく、彼女はあたしの足元を見て顔をしかめた。 「燃やすなんて罪人みたい。かわいそうに」 あたしの足元には灰と、ほとんど形の残っていない骨と、床の焼け焦げた跡、消えかかった魔法陣。 あっ!  ダイヤのピアス、残ってるじゃん! あたしの耳たぶは灰になったけど…… 「ナリッサ様、そろそろお戻りになった方がよろしいでしょう。夜も遅くなると怪しまれますから」 ノードはうなずくだけで部屋の片隅に控えていたローブの男に扉を開かせた。 「そうね」 ナリッサは素直に部屋を出て行こうとしたが、ジゼルが動こうとしないのに気づいて足を止める。 「ついて来ないの?」
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