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ジゼルの声がしてふと足下を見ると、赤毛かと思うほど血に染まったジゼルがあたしの足に顔を擦りつけている。白い毛のふわふわと、血濡れた部分のゴワゴワ。
「主ってあたし?」
「そうだ」
ジゼルがうなずくと、「はあ~ああ~」とノードがわざとらしく大きなため息をついて肩をすくめる。
「だろうと思いました。一体どういうことなんですか。低級悪魔が、しかも召喚される前から主がいるって。名前のある低級召喚獣なんて初めてです」
「低級とか言うな。召喚待機世界で勝手に名前をつけてくる輩は腐るほどいるんだ」
「でも、向こうでは悪魔との血の契約なんてないでしょう」
「血? 血は見ての通り必要以上に浴びた。女が巻き添えでこっちに召喚された時点ではまだ息はあったからな、契約が成立したんだ」
「でも、契約者が死んだら血の契約は終了するはずですが? 今回準備していた術式は血の契約で、魂の契約ではありません」
ノードとジゼルが勝手に話を進めているあいだ、あたしはキョロキョロと部屋の中を見回してみた。
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