ウィリアムズ男爵家の隻腕令嬢

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わたしは社交界デビューの十四才を迎えても魔力が錬成できず、『黙秘の誓約』ができないためチャーリー先生が監視役も兼任するようになった。 ウィリアムズ家の人々は秘密を守るために『黙秘の誓約』を行い、それは各々の心臓に刻まれる。『誓約』を行うには一般人レベルのわずかな魔力があれば十分だというのに、わたしはそれすらできない。 ――シャーロット様の魔力は限りなくゼロに近いですが、魔力ゼロの人間は存在しません。諦めずがんばってみましょう。 チャーリー先生は六歳のわたしにそう言った。七歳と八歳のときも似たようなことを言い、九歳のときは何も言わなかった。 「久しぶりの外出ですから楽しんでください」 家族のような顔で穏やかに笑いかけるチャーリー先生。彼が同情的なのは、ウィリアムズ家でのわたしの扱いが目に余るからだろう。 十四才の誕生日、父は「あれをおまえにやろう」と言い、ウィリアムズ家の敷地にある離れをわたしにプレゼントした。それから二年半あまり、わたしとソフィアはその離れで軟禁生活を送っている。顔を出すのはチャーリー先生くらいで、屋敷から出してもらえるのは迎春の宴の日だけ。
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