ウィリアムズ男爵家の隻腕令嬢

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「シャーロット様はウィリアム男爵家のご令嬢です。どちらかを選ぶなど……」 「そうね、わたしの聞き方が間違ってた。わたしとウィリアムズ緑士(・・)家ならどちらを選ぶ?」 困惑するチャーリー先生とソフィアに救いの手を差し伸べるように、コンコンと扉がノックされた。若い御者が遠慮がちに窓から顔をのぞかせる。馬車が停まってからずいぶん長く待たせてしまったようだ。 「気の利かない御者ですね。わたしが後で文句を言っておきます」 ソフィアはそう言いつつ、返事を回避できてホっとしているようだった。 わたしがチャーリー先生の手を借りて馬車を降りると、庭園で談笑していた数人の女性が一斉に好奇の眼差しを向けた。 「あら、クラウス侯爵家の寄生虫があそこに」 「さすが金食い虫のウィリアムズ男爵家。ずいぶん豪華なドレスね」 「着飾れば寄生虫が蝶になれると思ってるのかしら?」 「仕方ないわよ。あれ(・・)では着飾るくらいしか楽しみがないもの」 クスクス笑う彼女らの視線はわたしのドレスの左肩部分に向けられている。
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