ウィリアムズ男爵家の隻腕令嬢

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双子が不穏なことを囁きながら串刺し肉を手にニヤニヤ笑い合っている。そのときザワと会場がどよめいた。 「あっ、侯爵閣下が来た!」 「氷壁の小侯爵様よ」 分家の中でもウィリアムズ家は唯一の貴族で、他家は姓はあるものの平民ばかりだった。平民だらけの宴に礼儀もマナーもあったものではないけれど、若い男性たちは緊張し、女性たちがソワソワと落ち着かないのは侯爵家と言葉を交わせるから。 滅多に領地に顔を出さないクラウス侯爵。彼は帝都でグブリア皇帝直属の銀月騎士団団長を務めている。男性たちは侯爵の目に留まって帝国騎士になることを夢見、女性たちは「氷壁の小侯爵」と呼ばれるクラウス侯爵家の息子とお近づきになりたくて必死。 人々が手を止めて領主の登場に注目する中、変わらず料理を頬張っているのはウィリアムズ兄弟くらいだった。わたしはそんな弟たちを横目に、グラスを置いて壁際を離れる。 「あっ、おい。どこ行くんだよ、シャーロット」 「男爵家だからって氷壁の小侯爵がおまえを相手にするわけないだろ。立場をわきまえろ、ウィリアムズ家の寄生虫」
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