十六歳の誕生日の夜

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「シャーロット様、そろそろ本邸に向かいませんと夕食に遅れてしまいます」 窓辺でぼんやり氷壁をながめていたらソフィアが痺れを切らして声をかけてきた。 「ねえ、ソフィア。馬車くらい寄越してもいいと思わない? 普段着なら歩いて本邸に行けるけど、もしかして着飾る必要なかったのかしら? 今からでも普通のドレスに変える?」 「そんな……」 ソフィアは滅多にないドレスアップの機会だからと張り切って準備してくれた。本邸で家族とディナーを食べるだけなのに、父が仕立て屋を寄越してドレスをあつらえさせるのはウィリアムズ家の収支をクラウス家に報告しなければならないからだ。 その理由はクラウス侯爵家とウィリアムズ家の特殊事情にある。 ここクラウス領には世界樹焼失跡地があって侯爵家はその警備を任されているのだが、ウィリアムズ家も跡地の魔術的管理を任されていた。そもそも、ウィリアムズ家は世界樹焼失跡地の魔術的管理のために興された魔術家門。
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