十六歳の誕生日の夜

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世界樹に関するほとんどのことは帝国で機密扱いされており、クラウス家とウィリアムズ家には「世界樹跡地管理費」が与えられる。クラウス家に報告するのはこの「世界樹跡地管理費」の収支で、クラウス家は帝国に収支報告しているはずだった。 クラウス家が目を光らせているのは、管理費の無駄遣いではなく取引先の貴族や商団と癒着して機密が漏れること。 その点は問題ないのだが、ウィリアムズ家の収入は管理費しかなく、クラウス家に台所事情が筒抜けになることが問題だった。収支報告書を見たクラウス家の誰かに「ウィリアムズ家では娘が虐げられているようだ」と疑われないよう、パーティに出かけなくてもドレスを買わなければならない。 「シャーロット様、本当にそろそろお時間が……」 ソフィアの縋るような声でわたしは重い腰をあげた。 「チャーリー先生の迎えを期待してたんだけど来ないみたいね」 「あっ、チャーリーは魔塔主様に領内を案内するとかで今日は出かけてますよ」 「魔塔主様が来てるの? 世界樹跡地かしら」 「どうでしょう。チャーリーは跡地に入れないはずなので別の場所だと思いますけど」
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