十六歳の誕生日の夜

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「別の場所っていうとイブナリア王宮?」 ソフィアも見当がつかないらしく「さあ」と首をひねる。部屋を出ようとしたところで蹄の音が聞こえ、窓を見ると本邸からの馬車が見えた。 「あっ、迎えが来たみたいです」 「わたしがなかなか来ないから仕方なく馬車を出したのよ」 空は茜色に染まっていた。真夏とはいえ氷壁から吹き下ろす涼風のおかげで長袖を着ても汗をかくことはない。わたしはソフィアにもらった誕生日プレゼントのケープを羽織り、一緒に本邸へと向かった。 家族と顔を合わせるのは迎春の宴以来だ。あれはクラウス侯爵邸だったから、前回本邸を訪れたのはもっと前。 「久しぶりだな、シャーロット。突っ立ってないで座りなさい」 本邸二階にある広間の扉を開けるなり父はそう口にした。わたしを見ているようで視線は微妙に噛み合わない。 わたしが執事に案内されたのは母の隣の席で、向かいには双子が座っている。真ん中の椅子には父。父の背後には以前と変わらず二枚の肖像画があった。
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