春の宴と緑士の末路

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「お兄様、ウィリアムズ家とうちは結婚できないのよ。あの双子とわたしが結婚することはないってお母様が言ってたもの」 「エルゼ」 侯爵夫人が娘をたしなめ、侯爵閣下は「場所を変えよう」と入って来たばかりの扉へと戻っていく。わたしはザカリーに手を引かれてその後に続き、別室へ通されたのはわたしと父の二人だった。 応接用のソファテーブルがあるにもかかわらず立ち話になったのは、侯爵様がわたしと父の関係を察したからのようだ。向かい合わせのソファにこの顔ぶれなら、わたしと父が隣り合って座ることになる。ザカリーはそれを阻止するようにずっとわたしの手を握っていた。 「ウィリアムズ家の家庭事情に口をはさむ気はなかったが、そうも言っていられないようだ。わが息子は氷壁のように固くて頑固だからな」 「申し訳ありません」 父が頭を下げた。 「娘が家族に隠れて小侯爵様とお会いしているとは夢にも思いませんでした。ウィリアムズ家とクラウス侯爵家は結婚できないと教えてあるのですが」 「緑士様」とザカリーは本当の爵位で父を呼んだ。
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