春の宴と緑士の末路

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「魔塔との個人的な関わりは禁じられているぞ」 「わたしの結婚は必ずしも個人的なものとは言えません。侯爵家の結婚ですから。わたしは魔塔主様にシャーロットが黙秘の誓約をする必要があるかどうかお尋ねしました。その返事がこれです」 「魔塔主を利用したのか」 侯爵様はこめかみを押さえている。ザカリーは悪びれることなく「侯爵家の結婚ですから」と繰り返した。 「手紙によると、黙秘の誓約が必要なのは魔塔機密とされている魔術公式と魔塔内での研究内容。シャーロットが魔塔の研究を知るはずもありませんから、魔術公式をどの程度知っているかが焦点となります。世界樹跡地の結界術式を知っていれば誓約は絶対」 父はすでにこの話の行き着く先が想像できているようだった。血の気のない青い顔をしている。ザカリーはその蒼白の顔をチラと確認して話を続けた。 「一方、火球(ファイヤーボール)水球(ウォーターボール)といった基礎魔法の術式は密入国魔術師が辺境地で情報を流しているため、実際は機密になっていないのだとか。そのくらいの魔術公式なら黙秘の誓約をする必要はないということでした」
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