春の宴と緑士の末路

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「水球や火球とやらも教えていないのか?」 「シャーロット様は魔術行使の前段階である魔力錬成でつまずかれたので、基礎公式を教えるまでに至りませんでした。授業は一般人向けに書かれた魔術関連本を使用しており、魔塔機密にあたる内容は含まれておりません」 ザカリーがおもむろに内ポケットに手を突っ込み、また一枚の紙を取り出した。 「彼が証言したことについてですが、あらかじめ魔塔主様に授業記録と教材を確認いただき、シャーロットがクラウス家に入るなら黙秘の誓約をする必要はないと一筆いただきました」 侯爵様がザカリーの手から紙を奪って確認する。 「魔塔主は二人の結婚に賛成しているということか?」 「それはどうか分かりませんが、魔塔内では緑士を廃して正式な魔塔支部を置くべきという考えが広まっているようです。もしそうなった場合ウィリアムズ家の魔術師は魔塔へ行くことになると思いますが、魔術師でないシャーロットには行き場がない。魔塔主様はそれを案じておられました」 「どっ、どういうことでしょうか? 緑士家がなくなる?」
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