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「テオ・ウィリアムズも魔術を使えたらしいのですが、それは彼の妻となったイブナリアの魔術師が手ほどきしたのだそうです。使えたのは火球、水球といった日用魔法程度で、結界を維持することなど到底できなかったと。当時の黙秘の誓約は、イブナリア側の立場で戦争が語られることを防ぐために皇帝が指示したものらしいです」
ついに父は床に膝をついてしまった。
「……ですが、今になって緑士家をなくすなど」
「好奇心と探求心を封じられた魔術師は衰退するしかない――と魔塔主様が手紙に書かれています。魔術師でないわたしにはよくわかりませんが、任務を果たすだけのウィリアムズ家に優れた魔術師が生まれないのは仕方ないことだそうです。その質も代替わりするごとに落ちていて、シャーロットのように魔術を使えない子どもが生まれても何の不思議もないと」
すべておまえのせいだとでも言いたげに父がギッとわたしを睨んだけれど、今さら傷つきはしない。わたしはすでに自分の魔力が異常に少なかった理由を知っている。魔力の循環路であるマナ経路に銀色のオーラが流れていたからだ。
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