約束を果たすための別の理由

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約束を果たすための別の理由

「息子の婚約者候補としてシャーロット・ウィリアムズ男爵令嬢を当家で預かることにした」 宴に戻るやいなや侯爵様が宣言したものだから、会場は大騒ぎになった。 広間の隅ではソフィアがハンカチを手に目を赤くしている。わたしの侍女とはいえ、ウィリアムズ家の魔術師でもあるソフィアをクラウス邸について来させることはできない。 チャーリー先生がソフィアの肩を抱いて広間から出て行くのが見え、わたしは慌てて二人の後を追った。 庭園で談笑していた招待客らが一斉にわたしを振り返り、ヒソヒソと何か囁いている。片手でドレスの裾を持ち上げてつまずきながら駆ける姿は氷壁の小侯爵の婚約者候補としては失格に違いない。 「ソフィア!」 木陰にソフィアとチャーリー先生の姿を見つけて叫んだ。振り返ったソフィアは目だけでなく鼻まで真っ赤だ。 「シャーロット様どうしてここに? 中にいなくてよろしいのですか?」 「だって、二人が帰ってしまうと思ったから」 わたしが言うとチャーリー先生とソフィアは顔を見合わせてクスリと笑う。
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