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ラナ園のお茶会
「ラナ」という植物がある。
最大で背丈が三メートルほどになる常緑樹で、春に赤ん坊の小指の爪ほどの小さな青い花をつけ、初夏には豆粒くらいの白い実が鈴なりになる。南部国境近くの比較的温暖で雨の多い地域では、森に自生するだけでなく人々が好んで庭先に植えるという。
南部国境に位置するアルヘンソ辺境伯領。おれが領主の屋敷を訪れるのは今回で三度目だが、辺境伯家の長女タミア様、次女ソニア様に案内されて向かったのは屋敷に隣接するラナ園だった。アルヘンソ姉妹に挟まれて無表情にラナ園をながめるのはおれの護衛対象であるリアーナ皇太子妃。
リアーナ様は「ラナ」について何も知らないようだったが、おれは「なぜこんなところに」と心中穏やかではなかった。
護衛騎士として傍にいながら、暴漢から彼女を守ることはできても貴族令嬢の婉曲な嫌がらせには臍を嚙むしかない。こぶしを握りしめるおれを見て、ソニア様がクスッと忍び笑いをしたようだった。
「リアーナ様、どうぞこちらにおかけください。病み上がりのリアーナ様をこんなところまでお連れしてしまったものだから、デ・マン卿がお怒りのようです」
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