ラナ園のお茶会

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二人の令嬢は口々に言う。 タミア様は椅子に腰掛け、ソニア様は立ったままお茶を淹れていた。二人には護衛も侍女もついていない。辺境伯家の敷地内とはいえ年頃の令嬢二人がずいぶん無防備だと呆れたけれど、どうやら二人にとってはこれが普通のようだった。 ――もし、今おれが姉妹を人質にとってリアーナ様との離婚撤回を皇太子殿下に迫ったら…… 大それた考えが頭を掠めたが、おれが処刑されるだけでなく実家のデ・マン子爵家とリアーナ様のご実家フェルディーナ公爵家に多大な迷惑がかかるだけのこと。 おれはリアーナ様の夫である皇太子殿下に忠誠を誓った紫蘭騎士団の騎士だ。リアーナ様の護衛騎士になってから心の中では数えきれないほど主君に悪態をついてきたが、それを実際に口に出して実行に移すほど愚かではなかった。 その一方で、自分が後先考えない愚者ならリアーナ様を救えたかもしれないと思う。 リアーナ様が皇太子妃宮で暮らしていた頃、毎夜扉の外まですすり泣く声が聞こえていた。皇太子殿下が夜間にリアーナ様の宮に渡られたことは一度もなく、初夜すら意味不明な理由をつけて顔を見せなかったとか。
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