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もともと痩身だったリアーナ様が更に痩せられていく姿を、身近に仕える者たちは皇太子殿下に蔑ろにされたことからくる心労のせいだと思っていた。それが麻薬によるものだと気づいたのは今年に入って「帝都で麻薬が広まっている」という噂を耳にしたとき。
その頃のリアーナ様は少し触れただけでもポキンと折れてしまいそうで、おれもスサンナも他の誰も「麻薬」という言葉を彼女の前で口にすることはできなかった。けれど、あのとき強引に問いただして麻薬をやめさせるべきだったのだ。
「リアーナ様、こちらはラナの葉を使ったお茶です。この辺りではみな庭先からラナを摘んでお茶にするのですよ。どうぞお召し上がりください」
ソニア様にすすめられリアーナ様がティーカップを手にとる。華奢な指先は治療の甲斐あってずいぶん血色がよくなっているようだった。
魔塔主様の治療は一般の治癒師よりもかなり回復が早いようですね――、とは、今日アルヘンソ邸を訪れたリアーナ様に向かってタミア様が開口一番に言った言葉。
「懐かしい味がします。どこかで飲んだような」
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