ラナ園のお茶会

10/18
前へ
/3000ページ
次へ
やはり、リアーナ様はご自身が摂取していた麻薬の名前すら知らなかったようだ。「ご安心ください」とタミア様は穏やかな声で続ける。 「ラナの葉はラナ・ロークの材料ですが麻薬ではありません。ロークという木の樹液と混ぜることで精神作用のある麻薬となります。ラナ茶を愛するアルヘンソ領民としてラナ・ロークとラナ茶の違いをぜひ知っておいてもらいたかったのです。ラナ茶にも薬効はありますが、日常的に飲んで障りのあるものではありません」 タミア様はニコッと笑ってカップに口をつけた。ソニア様は新しいカップにラナ茶を注いでリアーナ様の前に置き、甲斐甲斐しく焼菓子を取り分ける。濡れたテーブルクロスはさも最初からそういうセッティングだったようにハンカチを敷いて済ませてしまった。 「リアーナ様、ラナの木は花の時期よりも実をつけた今の時期のほうが美しいの。白い実が涼しげでしょう? あの実は渋くて食べれたものではないけれど、来週には収穫してラナ酒を造る予定なんです。収穫前にこの美しい景色を見ていただきたくてお招きしたの。良かったらラナ酒も一緒に造ってみませんか?」 「来週、ですか?」
/3000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加