ラナ園のお茶会

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「リアーナ様、アルヘンソ家での静養はユーリック殿下からの提案です」 その言葉に再びリアーナ様が顔をあげた。どうして、とおれは思う。 どうしてあんなに傷つけておきながら今さら別れる妻に温情のようなものをみせるのか。どうしてあんなに傷つけられながら、「ユーリック」という夫の名前だけでそんな顔をするのか。 「公にされる離婚理由はリアーナ様が気鬱のため社交の場に顔を出すこともままならないからということになるようです。離婚成立後すぐに公爵家に戻って皇家から厄介払いされたような印象を与えるより、ユーリック殿下の母親である故リリアンヌ皇后の実家であり、気候のよいアルヘンソ領で静養した方が円満な離婚に見えるだろうと」 皇家は体面ばかりだ、とおれが心の中で毒づくと、ソニア様が見透かしたように笑う。 「円満離婚であれば再婚話も円滑に進むでしょう。リアーナ様の体調が回復されれば男性からのお誘いが殺到しますよ」 思わぬ言葉に動揺しているのはおれだけ。リアーナ様は「わたしなど」と他人事のように口にした。
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