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おれが問い返すと、リアーナ様も首をかしげる。
「帝都では初夏にデビュタントの舞踏会が開かれるでしょう? 当家でも懇意にしている貴族の令嬢令息を招いて舞踏会を開くことにしたの。かしこまったものではないから気負わなくていいわ。リアーナ様がアルヘンソに留まるにはちょうどいい言い訳にもなる。帰りに正式な招待状を渡すからいい返事をお待ちしています。デ・マン卿は……」
タミア様はふと思案顔になり、「保留にするわ」と口にした。
「どうしてですか?」
縋るような目でタミア様に聞いたのはおれではなくリアーナ様だ。
去年の夏のお茶会以来、体調不良を理由に一切公式の場に姿を現さなかったリアーナ様にとって、どんな小さな集まりでも不安になるのは変わりない。今日アルヘンソ邸に訪れるのさえ緊張していたくらいだ。けれど、タミア様は容赦なかった。
「デ・マン卿の主君は皇太子殿下ですよね。リアーナ様が皇族でなくなったあとデ・マン卿がどうなるか分かりませんし、帝都に戻るとなれば辺境地の舞踏会にお誘いするわけにもいきません」
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