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黒ずくめの男二人が剣で薙ぎ払われあっさり路上に突っ伏した。身のこなしも剣捌きも手練れというわけではなく、どうやら専門の暗殺集団ではない。むしろ剣を持って間もない素人のように見える。だとすれば、軽く脅せば簡単に黒幕を白状する可能性がありそうだ。
交戦中の仲間に加勢しようとしたとき、ヒュッと矢の気配がして無意識に剣を払った。カッと音がし、折れた矢が足元に落ちる。日の暮れかかった松林の中で黒い影が動いた。
「隊長! こっちは大丈夫なので射手を追ってください! おそらく矢が尽きたかと」
叫んだ仲間の足下に黒ずくめの死体がひとつ増えていた。残りの敵は二人、対して仲間は三人。この場を任せて問題ない。
「わかった。だが油断するな。馬車の安全が最優先だ!」
「承知しました!」
おれは影を追って林に入った。すると、相手が突然立ち止まり次の瞬間には矢が頬をかすめる。
「クッソ、矢がなくなったんじゃねぇのかよ」
領地にいた頃の粗野な言葉が口をつく。
「デ・マン卿が邪魔だから馬車から引き離したんじゃないの?」
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