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「剣士殿、加勢いただき感謝する。申し訳ないがその男を連れてこの先の屋敷に来てもらえないだろうか。おれは現場に戻らねばならん」
「わたしを信じていいの? この男、逃しちゃうかもしれないわよ。面倒になって殺しちゃうかもしれないし」
女の笑いを含んだ声が返ってくる。
「抵抗するなら殺して構わない。剣士殿のことは敵ではないと判断した」
「へえ、意外。優柔不断な男だって聞いてたのに」
誰からと問いたいところだが雑談で時間を無駄にするつもりはない。
「デ・マン卿。騎士を一人寄越してくれる? こう見えて非力なの」
「わかった。礼は後ほどする」
言い捨てておれは馬車へと駆けた。すでに日は暮れ、馬車に付いているオレンジ色のマナ石ランプがボウッと光っている。
「あっ、隊長!」
騎士たちが一斉にこちらを向き、その背後で馬車の扉が開いた。
「デ・マン卿? ご無事なのですか?」
顔を見せたリアーナ様を騎士たちは半ば強引に馬車の中へと押し戻す。さすがにこの惨状を見せてはまずいと思ったのか、彼らは死体を松林の中に移動し始めた。
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