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その瞬間、まばゆい光に包まれた。
まあそれは大型トラックのヘッドライトだったわけだけど、このまま天国に召されるんだと悟ったのは走馬灯を初体験したから。
古びたフィルム映画みたいに脈絡なく継ぎはぎされた記憶がフラッシュバック。
いつも橋の近くの信号の傍で母親の迎えを待っていた男の子の幽霊とか、中三の墓参りの時に初めて会った戦死した曽祖父とか、うっかり実体のある人間だと思って話しかけてしまった駐在所のお巡りさんとか――ああ、もう、あたしの人生には家族や友人とか、生身の人間との楽しい思い出もあったはずなのに。
あたしを包んでいた〝聖なる〟っていう表現がピッタリの明るい光が消えかかると、ふと、腕の中にふわふわしたあったかいものが蠢いているのに気づいた。
なんだっけ、このモフモフ。
あ! 猫を助けてトラックに轢かれるっていう、なかなかベタなことをやらかしたんだった。
大学への通学路で何度か見かけた子猫。毛は真っ白で目はくりっとしていて赤色だった。読んでいた小説に登場する召喚獣にそっくりで、あたしは小説の中の名前のままに「ジゼル」とその猫に名前をつけ、たまに会えるのを楽しみにしていた。
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