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「はじめてお目にかかります、魔塔主様。わたくし、ナリッサ皇女殿下の家庭教師を務めさせていただいておりますゾエと申します」
ずいぶん小柄なその家庭教師は、身長も体の凹凸加減もナリッサといい勝負だった。けれど、臆することなくノードを捉える視線に少女らしい初々しさなどなく、どう見ても二十一歳のあたしより年上。
「ダンスの練習をされるのですね。急にお邪魔して申し訳ありませんでした」
出で立ちからして明らかに平民のゾエにも丁寧な言葉を使うノード。幽霊のあたしにもデスマス調だけど、からかう時もその言葉遣いだから余計に神経を逆なでされる。わかってやってるんだろうけど。
「ナリッサ様。魔塔主様とのお話が長くなるようでしたら本日のダンスの練習はやめにしておきましょうか?」
この家庭教師をかわいがっている公爵の名前はなんだったっけ、と考えていたら、
「ゾエ、今日はガルシア領に帰る日だったかしら?」
とナリッサが口にした。ゾエは「はい」とうなずく。
「この度は数日で戻りますので、ダンスの練習はその後で始めても舞踏会には十分間に合います」
そう、ガルシア公爵だ。
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