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「サラ」って呼んでくれたら憑依した体から抜け出せるんだから!
「どうぞ、部屋の中に入ってください」
ゾエに言ったふうを装っているけれど、ノードの言葉は明らかにあたしに向けられたものだった。逃げるなよ、と。
ゾエは魔塔主に促されたと思い一歩だけ寝室に足を踏み入れる。
「ノードがいるからいいじゃないですか」
あたしはゾエの隣で開き直って言ってみた。ノードはもちろん無視したけれど、ジゼルはタンッと床を蹴ってナリッサの肩に乗る。ノードの肩に比べると少女の肩は華奢過ぎて、バランスを崩しかけた白猫は赤髪に爪を立てた。
「いたっ」
小さく叫んだナリッサに構うことなく、ジゼルは企み顔であたしに手招きする。あたしとジゼルはうなずきあい、ノードの笑顔に凄みが増した。
「魔塔主様、これは確認のためです。確認はノードがいるときじゃないとできませんからね」
ノードが何も言えないのをいいことに、あたしは以前憑依したときのことを思い出してナリッサの肩を掴んだ――
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