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と思ったけれど、あたしの手はスカッと彼女の体をすり抜け思わずつんのめる。これにはノードも驚いたらしく、何度もナリッサに触れようとするあたしの動きを観察しながら「ふむ」と声を漏らした。
一体どういうことだろう。
ナリッサ以外の人には憑依できない、というのなら納得できる。だってここはナリッサが主人公の小説『回帰した悪女はお兄様に恋をする』の世界。あたしはその世界をナリッサ目線で読んでいたのだから。
じゃあ以前ここに来た時はナリッサに憑依できて、今回憑依できない理由は何?
近い未来に行われる尋問と説教に検討会が追加されそうだった。
ふと視線を感じて振り返ると、ゾエがじっとこちらを見ていた。もちろん魔力のないゾエの網膜にあたしが映るはずはなく、彼女が観察しているのはナリッサ。でも、ゾエの青い瞳はナリッサの表情ではなく彼女の腕に抱かれたジゼルに向けられているようだった。
「その魔獣は魔塔主様が飼われているのですか?」
ゾエの言葉に「おや?」という感じでノードがわずかに目を見開いた。
「ゾエさんにはこの白猫の魔力がわかりますか」
「はい」
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