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「帝都ではなくガルシア領に滞在していた時のことです。ガルシア領の魔獣持ち込み基準は帝都の定めたものに準拠していますが、持ち込むのは帝都ほど難しくありません。魔塔の監視の目も及びませんし」
最後の一言には皮肉が込められていたようだけど、魔塔主の表情が揺るがないのを確認してゾエは話を続ける。
「通常、魔獣生息域から離れるほど魔獣の魔力は低下するはず。ですが、わたしを襲ったあの時の魔獣は辺境地域でなければ見られないレベルのものでした。キツネに似た魔獣でしたが、尻尾の形状が明らかに魔力に適応したものに変形していましたから」
「何本でしたか?」とノードが聞いたのは尻尾の数だろう。
「数える余裕はありませんでしたが、少なくとも五本以上。わたしが調べた資料によると、グブリア辺境域でも自然生息しているのは多くて三本程度、帝都を中心とした帝国中央部では尻尾の枝分かれした魔獣を見ることも珍しいくらいです。おそらく魔獣生息域近くで捕らえ、魔力を保持したまま連れて来られたのでしょう。帝国で流通している結界檻での捕獲は無理かと思いますが、おそらく――」
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