憑依実験と石榴宮の新しい執事

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ジゼルが喋りかけて途中でやめた。たぶん「(あるじ)」と言いかけ、ナリッサに聞かれたらまずいと思ったのだろう。ゴホン、と猫らしくない咳ばらいをして改めて口を開く。 「ぼくは召喚獣だから関係ない。この世界の魔獣はマナの循環の影響を受けているから、この女が言ったようなことが起こるんだ。世界樹があった頃は循環の中心にある世界樹がマナを浄化し、循環の辺縁にある魔獣生息域の汚れたマナから魔獣が生まれると考えられていた。けれど、二百年前の戦争で世界樹が失われてもマナの循環が保たれているということは、世界樹がマナを浄化していたというわけではないのだろうな」 「博識ですね、ゾエさんは」 「ジゼル様は、だろう?」と、ノードに向かって白猫がケケケッと笑う。この悪魔っぽい笑い声もゾエにはニャアと聞こえるのだろうか。 「ナリッサ様、ダンスの練習をなさるのですよね」 ノードは話題を変え、ゾエはすっかり魔塔主に気をとられていたのか「アッ」と能面の家庭教師らしからぬ声を漏らした。 「下の広間でエンドー様が準備して下さっています。ですが、まだ魔塔主様とお話があるようでしたらそうお伝えしましょうか」
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