憑依実験と石榴宮の新しい執事

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表向きは皇宮医があたったことになっているリアーナの治療。その本当の主治医はノードだ。すでにノードの手を離れたのか、それともゲートで別荘まで往診するのかは分からないけれど、一年間の療養のあとは正式に皇太子と離婚することになるのだろう。 なんとなく、リアーナには月光の庭園にいた騎士が付き添っている気がした。まさにファンタジー小説的な妄想だけど、皇宮を追われた元皇太子妃と僻地まで添う専属騎士との恋物語がこの世界の片隅で展開されるなら、ちょっと救われた気持ちにもなれる。 リアーナに直接会った記憶がないナリッサは、どこか居心地悪そうに話を聞いていた。あたしはどうにも居たたまれなくなって「先に行ってます」と部屋を出て階段を下りる。背後で「降りましょうか」とノードの声がした。 階段を下りてすぐの扉が開け放たれ、その扉の傍で階上を見上げているのは侍女のポピーだった。 「なかなか降りて来られませんね」 彼女は部屋の中にいる誰かに向かって話しかけた。それはおそらく――、 「魔塔主様が気にかけて下さるなんてありがたいことですから、ゆっくり待ちましょう」
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