憑依実験と石榴宮の新しい執事

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聞き覚えのある声に確信を抱きつつ部屋をのぞくと、やはり月光の庭園にいたあのエンドーだった。 お茶会の日の一部始終を目にしたエンドーは、おそらくリアーナ妃の治療の際にもノードと言葉を交わしたのだろう。彼の言葉にノードに対する信頼が滲んでいる。 「それにしても立派なラランカラですね」 エンドーは広間中央の丸テーブルに活けられたチューリップのような花に手を触れた。花の名前がラランカラらしい。 ラランカラはナリッサの髪色に近い赤と同系統のオレンジや黄色でまとめられ、他の種類の草花とともに部屋を彩っている。 「陛下からの贈り物です」 ポピーが躊躇いがちに口にした。 そうなの?  何の心境の変化? 「年に一度だけ、ナリッサ様の誕生日にこうしてラランカラを贈られるのが陛下とナリッサ様の唯一の繋がりなんです」 小説に描かれない意外な裏設定……! 説明するポピーの顔は寂しげだった。きっと去年までは他の侍女たちと「花だけなんて」とせせら笑っていただろうに。 エンドーは「誕生日ですか?」と動揺を隠さずウロウロと目を泳がせ、ポピーがクスッと笑った。
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