ダンスレッスンと公爵家からの手紙

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「はい。ご存じでしょうが初夏の舞踏会はデビュタント向けに皇室主催で開かれるものです。ナリッサ様に覚えていただくのは皇帝陛下に謁見する際のパヴァーヌと、そのあと令嬢令息が交流のために踊るワルツ。おそらくワルツの方が大変でしょうから、わたくしが宮にいない間も練習できるよう先にワルツを覚えていただいているところです」 「基本のステップだけ覚えて、あとは笑顔で誤魔化せばいいですよ」 ノードの雑なアドバイスに「魔塔主様」とゾエが無表情の笑みを向ける。〝無表情の笑み〟って何? って思うけど、それ以外の表現が浮かばない。 「では、はじめましょう。……はい、1,2,3、1,2,3」 ゾエの声にあわせて二組のカップルが広間でステップを踏み、ふと見るとポピーがリズムに合わせて体を揺らしていた。 ナリッサのボリューミーで丈の長いドレスは練習のために着ていたのか、ダンスの動きによく映える。髪をアップにしたら宮廷映画の中から抜け出したみたいだ。ユーリックを誘惑できるかもしれない。 ……それに比べ、どうしてあたしの服はこんなちんちくりんなんだろう。
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