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小説でナリッサが獣人騎士の存在を知るのはずいぶん後のことだ。変身シーンで記憶にあるのはランド、あとは……確か猫がいた気がする。鳥はどこかで登場したかもしれないけれど正直なところ覚えてない。風景描写と思ってスルーしたか、そもそも作中に描かれていなかった可能性もなきにしもあらず。
ふと室内に目をやると、ナリッサが椅子に座って足首を擦っていた。
「足の裏がつりそう」
「慣れるしかないですね」と、ゾエは他人事だ。
「ゾエは舞踏会に行ったことがないって言ってたのに、どうしてそんなに上手なの?」
不服そうなナリッサは、元来負けず嫌いな性格なのだろう。でなければ悪女にならず引きこもっていたはず。
「剣にしろダンスにしろ、何かとガルシア小公爵様の練習に付き合わされましたから」
「小公爵様は舞踏会で別の方と踊られたってことよね」
ナリッサは腹立たしげに言ったあと、ハァとため息を吐いた。
「ユーリック殿下には練習しておきなさいって言われたけど、わたしをエスコートしたい方なんていないわ」
「心配される必要はないかと」
ゾエの事務的な口調がナリッサを少し安心させたようだった。
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