ダンスレッスンと公爵家からの手紙

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「社交界デビューの舞踏会では身内か家門の騎士にエスコートしてもらうことが多いようです。懇意にしている家門同士で年の近い令嬢令息がいる場合はこの限りではありませんが、皇女であるナリッサ様に釣り合う家門で皇帝派の貴族となると数は限られますし、おそらく皇太子殿下が紫蘭騎士団のどなたかを寄こして下さるでしょう」 小説でのナリッサはどうだったっけ? 回帰前は麻薬事件で謹慎になって舞踏会に出席できず、ナリッサの社交界デビューはその翌年になった。それも皇家主催の派手なものではなく、ガルシア公爵家主催の舞踏会。 ――で、ナリッサはこのとき初めて意図的に悪女っぷりを発揮した。 原因はユーリックが舞踏会に連れてきた皇太子妃のヒメナ。彼女は数少ない銀色のオーラを継ぐ家門の出身で、ユーリックと同じ銀色の髪と菫色の瞳を持っている。貴族たちが「皇女よりもよほど殿下の妹らしい」と囁き合うのを聞いたナリッサは、ジゼルの火炎魔法でヒメナの銀髪に火をつけ、それを消すふりをして水をぶっかける。 麻薬事件で無実だと信じてもらえなかったことがナリッサの心を捻じ曲げ、「悪女」と呼ばれることに開き直ってしまった。
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