猫を助けて死ぬとかベタではなく稀有な体験だよね

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ジゼルは小説の設定では悪魔。通学路にいるジゼルも愛くるしい見た目とは裏腹に、トンボを叩き落とす姿とか、巣から落ちた雛鳥を咥えている姿とか、なかなかインパクトある瞬間に遭遇することが多くて、しかもドヤ顔であたしを一瞥して去っていくのだ。 まさかあたしがその猫のためにトラックの前に飛び出すなんて、もしかして夢だったりしない? ゲホッと、咳き込むと口の中に血の味が広がった。 どこが痛いのかもわからないくらいあちこちに激痛が走り、体が強ばって震えがくるのは血を流しすぎたせいかもしれない。夢ならさっさと覚めてほしいところだけど、覚めるどころかこのまま永遠の眠りに落ちそうな気配。まだこうやって思考を巡らせてるあたし、けっこうしぶとい。 トラックの運転手なにしてんだよ、救急車の音もしないし、人通りの多い道なのに人の気配もない――いや、カツンとヒールを鳴らしたような音がした。 薄暗いのは夜だから?  あたしが轢かれたの何時頃だっけ? あたし死ぬの?  まだ生きてるんだけど、このまま誰にも助け起こされないまま野垂れ死ぬの? ゲホッ、と吐いた血で頬が濡れた感触があった。 「ニャア」
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