猫を助けて死ぬとかベタではなく稀有な体験だよね

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ノードの声に続いて「ジゼル」と、男の子の声がした。信号機のところで母親を待っていた、あの男の子の声に似ている。 「ジゼル殿。……ふむ、お名前をお持ちなのですね」 「名無しと思ったか?」 挑発するような口調なのに声が男の子だからなんだか可愛らしい。 「ジゼル、あなたの(あるじ)となるナリッサよ。さっさと契約しましょう」 「主だと?」 小説だとジゼルはすぐにはナリッサと契約しないはずだ。 「お前にその資格があるとは思えない」 そういえばこんなセリフ、小説にあった。 「そんな!」 「まあ、様子見だな。しばらくお前の能力を観察させてもらう」 ナリッサがホッと息を吐いたような気配があった。完全に拒否されたわけではないのを知って安心したのだろう。 ナリッサはたしか緩やかなウェーブの長い赤髪に緑眼。皇族に遺伝するという銀色のオーラが発現せず、焦って黒魔術に手を出すことにした。出自がなかなか複雑で、もとは平民だから皇宮内では不遇な扱いを受けている。同情したくなるのは、このナリッサが実は小説の主人公だからだ。
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