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「マリー、帝都に来てもぼくがフラれたことは内緒にしてね。騎士団員たちはいつもぼくをネタに笑うんだから」
「それなのに副官になるのですね」
おかしいよねえ、と彼は首をかしげる。
わたしはどうやって祖父と両親を説得しようか考えている。他にも考えないといけないことが山積みだった。
男爵夫人にとってわたしの紫蘭騎士団入りと子爵家との結婚、どちらが脅威となるのだろう。帝都住まいを羨むのは目に見えている。父にとばっちりがいかないようにしないといけない。
悩ましいことだらけだけれど、胸の奥にジワジワと高揚感が広がっていた。種族の違う獣人と知り合える、騎士たちと剣を交えることができる、そして噂でしか知らない帝都をこの目で見られるのだ。
「あっ、でも」
「どうかした? マリー」
「帝都では魔獣を狩れません」
うっかりしていた。比較的辺境よりのトッツィ領だからこそ辛うじて魔獣が自然生息しているのであって、帝都では魔獣もふつうの獣になってしまう。
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