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「それなら大丈夫だよ。あまり知られてないけど魔塔を囲う林には魔獣がいるんだ。魔塔の人間か皇族しか入れないけど、修練のためって言ったら殿下は許可してくれると思う」
初耳だ。
「浄化されないということは魔力保持結界が張られているのですか?」
「詳しくは知らないけど、林自体が結界になってるみたいなんだ。マナが林の中だけで循環してる。ぼくは正直あそこが苦手なんだけどね」
「小鳥なんて一発で魔獣に食べられてしまいそうですものね」
「悔しいけどそうなんだ。ぼくは愛くるしさで売ってるから、鳥の姿になって戦ったりできない。逃げるが勝ちさ」
つい笑い声を漏らしてしまうと、ルースはうれしそうに「はい」とチーズパンを差し出してきた。この人と結婚したらこれが日常になるのだろうかと想像したら、なぜか笑いがとまらなくなる。わたしは彼の向かいに座り、チーズパンを受け取ってかぶりついた。
気持ちが高揚している。
それはサーカス船の纏う魔力のせいではなく、運命の王子様への憧れでもなく、これから訪れる未来が楽しみだから。
「そんなに笑わなくても」
青い髪が揺れる。
運命なんかじゃない。
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