「リンドバーグ子爵令息、婚約破棄される」の巻

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子どものいないリンドバーグ子爵家に養子として迎えられたおれに、フォスター侯爵家から縁談の話が来たとき両親は泣いて喜んだ。しかし、あれからたった三ヶ月。オリビアの傲慢で我儘な態度に辟易しているのはおれだけではなかった。おれの幸せと家門の将来を両親が案じていることも知っている。この破談はリンドバーグ家に安堵と平穏を、そしておれには希望の光をもたらすのだ。 何よりおれは自由になりたい。 「失礼いたしました、フォスター侯爵令嬢。わたくしには至らぬ点が多々ありましたが、ファイアストン卿ならあなたを幸せにすることは間違いありません」 ジョージ・ファイアストンは不幸になるかもしれないが、そんなのはおれの知ったこっちゃない。男爵家の息子が侯爵家の娘と結婚できるのだ。今頃ファイアストン家は大喜び。おれも心の中で万歳三唱しておこう。 オリビアは侯爵家の生まれでなければ口も手癖も悪いただの性悪女。猫かぶりの技術だけはプロ並みの上、陰口を叩こうものなら侯爵家の力で何をされるかわからないからみな口を噤んでいる。おれが異世界召喚される前の記憶を参考にするなら、いわゆる「悪役令嬢」というやつだ。
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