「リンドバーグ子爵令息、婚約破棄される」の巻

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三年前召喚されたとき、本来はペット用の中級魔獣が召喚されるはずだったと聞かされ驚いたが、召喚者がリンドバーグ子爵のような優しい人で良かった。 動物園の飼育アルバイトをしていたおれが何かの身代わりに召喚されたのだとしたら、あのとき一緒にいた子どものホワイトタイガーだろう。あんな愛くるしい魔獣の代わりが凡庸な大学生というのは申し訳ないが、異世界ファンタジー好きのおれは召喚当初浮かれていた。 なぜならリンドバーグ夫妻は魔術師だ。 魔力も何もないおれを養子とし、魔力がないくせに魔法に興味をもつおれに嫌な顔ひとつせず魔術の基本を教えてくれる新しい家族。魔力がなくても魔術が使える裏技なんかも教えてくれ、『魔力ゼロで異世界召喚されたけど金持ち子爵家で悠々自適のスローライフ』的な感じで過ごしていた。 そろそろ社交の場も出てみるかと勉強を始めたのは召喚から約半年後。隣国の名前を聞いて、ここがおれの考えた小説の世界だということにようやく気づいた。
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