「リンドバーグ子爵令息、婚約破棄される」の巻

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三年間リンドバーグ子爵家の息子として過ごしたが、グブリア帝国への憧れは日に日に強くなるばかりだった。なぜなら、おれの今いるギャクハー王国は女が常に男の上にいる。そして魔力の強さがものを言う。グブリア帝国とは真逆の世界観なのだ。 グブリア帝国では魔術師は魔塔に押し込められ、一般人に魔力はない。そもそもグブリア帝国皇帝が魔術嫌いだ。また女性の社会進出という面ではひと昔前の日本と同レベルで、女性である皇后及び皇妃には国務に口を出す権限はない。それが良いとは思わないが、魔力のない男にとってギャクハー王国とグブリア帝国、どちらが住みやすいかは明白だ。魔力量や性別だけでなく獣人に対しても偏見のないリンドバーグ夫妻が特別なのであって、おれが彼らの元に召喚されたのは小説の神様の慈悲かもしれない。 偏見にまみれたギャクハ―王国。オリビアがおれに婚約を申し込んできたのは好奇心からだった。 「へー、魔力のない男ってこんな感じなんだ。かっわいー」 初対面のとき、跪いたおれの頭を気安くなで回したオリビア。自分がペットと同等の存在なのだと気付かされた瞬間だった。
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