20人が本棚に入れています
本棚に追加
そもそもギャクハー王国は構想に行き詰まったときお遊びで考えたものだ。そこは名前から察してほしい。物語に登場させるつもりもなく、いつか短編でコメディを書くときにでも使えればいいくらいに思っていたのに。おれがこんな世界の外れ地帯に召喚されてしまったのは、構想ノートの神様によるお仕置きかもしれない。
まあいい。リンドバーグ夫妻にイチャイチャラブラブしてもらう作戦はすでに成功し、おれには一才になる義妹がいる。このままおれがリンドバーグ家に居座れば、優しいリンドバーグ夫妻のことだ、おれを跡継ぎにすると言うだろう。だが、本心では血の繋がった我が子が家門を継ぐことを望んでいるに違いない。なぜなら、おれの義妹は一才にしてめちゃくちゃ魔力があるのだ。チート級の魔力は転生者かと疑いたくなるほど。魔力第一主義のこの国でどちらが跡継ぎとして相応しいかは考えるまでもない。だからおれは自ら身を引く。そのためにはオリビアとの婚約破棄が欠かせない。
そしておれは旅に出るのだ。そのあと魔塔を目指して冒険する。異世界に来たのだからスキルゼロだろうが魔力ゼロだろうが冒険しないと始まらない。
――いや、ちょっと待て。
最初のコメントを投稿しよう!