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いや、ファイアストン卿。お前はババ抜きでババを引いたのだ。負けたくなければ次のターゲットを見つけババを引かせるしかない。おれは先にこのゲームから抜けさせてもらう。
ジョージ・ファイアストンに憐れみの眼差しを向ける男はおれだけではなかった。周りを取り囲む貴族の中には、おれ同様、かつてババを引いた男たちがいる。おれのように大勢の前で晒されなかったのは、彼らの魔力がオリビアよりも上だからだ。オリビアの好みは魔力の多い男。おれは箸休め的なやつ。
魔力のないおれにも温かな目を向けてくれる、かつてババを引いた男たち。おれと彼らの間には無言の連帯感があり、アイコンタクトで互いを称え合った。
だが、一度ゲームを抜けたとはいえギャクハー王国にいる限りいつまたババを押し付けられるかわからない。先輩たち、おれは先に「アガリ」だ。国外に逃れてしまえばもうババを引くことはない。
さらばだ、ババ(ァ)。
「ゼンがなんだか嬉しそうで気に食わないわ」
えっ?
「わたしとの婚約破棄がそんなに嬉しいのかしら?」
ちょっと待って、ちょっと待って、お嬢さん。
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