初めの落とし穴

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初めの落とし穴

どうしようもなく 私は落ちていく ただ、ただ、どこを見るもなく落ちていく 頭を下にして、時折丸くなって、そして足を伸ばす 瞳は閉じたまま 何も視界に入れず 真っ白な背景に真っ黒な視界 ただ、ただ、落ちていく 私はふと、目を開ける 視界に移る真っ赤な林檎 私はゆっくり手に取った そして……齧った 林檎の甘い蜜が口に広がる でも、どこか、違う林檎の味 "カハッ" 私は喉を押える これ、毒林檎… はぁ、きっと、罪なんだ 罪...どうしようもない罪 誰かの逆鱗に触れたとか 騙されたとか そんな理由は通用しない罪なんだ 私は朧な瞳で視界を毒林檎から外す 真っ赤な薔薇が、ひらひらと花弁を落としていた 私は罪を犯した ならば、助けなんてこない 助けてなんて、おこがましい 真の愛とはなんなのか? 手を上にあげる 何かを掴むように、空を掴む すると、手には糸が 先を辿ると糸車があった 触ると眠りについてしまうんだっけ? 眠り姫…なれるなら、なりたい もう、永遠に 幸せなどいいから、なんて お姫様には相応しくない考えだ 視界に何かが降りてくるように映る 扉がある それも、あちこちに1枚の扉がいつの間にか広がっていた 私は落ちていくこの道で、ドアノブに手をかける なんとなく、この先にある気がするのだ 私が戻るべき場所 不安と期待、不安の方が大きいかもしれない 私にはガラスの靴も青いドレスも魔法もない それでも、幸せになれる? ...... 私はそっと、ドアノブから手を離す あけられない、無理だ 私はまた身を小さく丸めた そして落ちる ただ、ただ、落ちていく この流物たちと一緒に私も流れていく 目を覚ましたくない、白いうさぎはどこかへ消えた 今の私は 赤の女王にあったら 首を跳ねられるような怠慢だろう "Drink me" そう書かれている瓶を不意に掴む ……ごくっ 私は飲んだ、何も考えず ただ、飲んだ するとどうだろう? 周りのものがどんどん大きくなっていく ちがう、私がちいさくなってるんだ 私は笑みをこぼした このまま、誰にも見つからないように 静かにそっと、ここで過ごそう そうすれば、罪も犯さなくてすむ これは、夢 永遠の夢 叶わぬことを叶えられる夢 誰も私を呼ばないで 誰もページをめくらないで そのまま閉じてください
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