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傾斜角2%前後の電線ゆらゆら
諸君は、文豪の作品を読んだことはあるか?
三島君や菊池君や、坂口君のことだ。
小生はない。
ベストセラー作家だというのに…
時代がそうさせたのだから、僻みや嫉みたるや驚嘆であった。
白金のマンションは、現金一括で購入したが主人はいない。
何故なら小生は、登戸の、二ヶ領用水脇の、モノレール跡地の、築40年のアパートに住んでいるからだ。
小生は人を騙すのが好きだ。
ネット世界の姿は、さぞや成金の、横柄な作家に映るだろうがそれが小気味良い。
世俗には興味がないから尚更だ。
小生が病に侵されたのは、つい先日のこと。
ぼやあっと…如何にも白痴の如く、ぼやあっと歩いていたさ中に、ふと、頭上に靡く電線を目にした瞬間に発病した。
イキモノみたいに揺れるソレが、堪らなく奇怪なツキモノに思えたのだ。
イキモノ、ツキモノ、イワレモノ、コワレモノにコワサレルナ。
と、声もした。
小生は、ヤドクガエルのようにぴょんと跳ね上がり、傾斜角2%あるかないかの駐車場で尻込みをした。
するとどうだろう。
足下が落ち着かないばかりか、奈落の底へと没落する幻影が、脳髄を駆け巡りニューロンを破壊するではないか。
立てば電線。
座れば傾斜角2%前後の絶望。
小生は、トーキー映画のコメディアン宛ら、コマ送りの人形みたいな動きで、立ち座りを1時間程繰り返し発狂した。
医者の世話にはならず、アパートからは出ないように心がけた。
相変わらず、ネットの中の小生は、キセルを咥え、背の高いスツールでキメている。
この病は、2024年に日本で感染が確認された伝染病〔電線病〕で、ケーブル伝いにパソコンやスマホを通じて視神経からヒトにうつる。
治療法はない。
ワクチンもない。
だが、小生は希望を抱いている。
このまま、ネットの世界で生きるのも悪くない。
見たいものだけ観れば良い。
そうだろう?
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