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なんだろう。私だけが状況を飲み込めてないみたい。なにより梅吉さんが言った、一緒に暮らすって言葉が引っかかっている。
なに一つ理解できていない中、突然頭上からドタバタと鈍い音が鳴り出した。続いてバンッと勢い良くリビングの扉が開くと、小さな塊が中に飛び込んで来た。
「ねえ、牡丹お姉ちゃん来たの?」
「こら、芒! 家の中を走り回ったらだめだろう」
影の正体は小さな男の子で、小学三年生くらいかな。藤助さんに叱られているのに、きらきらと大きな瞳を瞬かせている。
すっかり興奮している芒くんの後ろから、今度は目付きが鋭くて、眉がきりっとしているイケメンがゆらりと気怠げに入って来た。
「ったく、うるせえなあ。どこぞのバカの影響を受けちまったんだろ。かわいそうに」
「道松さんよ。どこぞのバカって、もしかして俺のことか?」
「お前以外に誰がいるんだ」
「なんだとーっ!? 誰がバカだ!」
「ちょっと、道松も梅吉もケンカしないでよ」
顔を合わせるなりケンカを始めた道松さんと梅吉さん。二人の間に藤助さんが止めに入る。
だけど、
「お二人のケンカは、いつものことです。いい加減、あきらめた方が聡明ですよ、藤助兄さん」
いつの間にいたんだろう。藤助さんの後ろに銀縁眼鏡をかけた色白の、やっぱり目元が涼しいイケメンが立っていた。
「うっ、菖蒲。それは、そうだけどさ……」
菖蒲さんとかいう賢そうなイケメンの言葉に藤助さんが落ち込んでいると、
「あっ、君が牡丹ちゃんだよね。俺、桜文っていうんだ」
最後に部屋に入って来た、大柄な体の割には穏やかな顔立ちをしたイケメンが、よろしくと私に向かって手を差し出してきた。
「はあ、こちらこそ」
そう言って私は桜文さんの手を握り返す。
けど。
「って、ちょっと待ってください! あの、みなさんは一体……」
この人達、一体なんなの!? よろしくって、どういうこと?
私が首を左右に回していると、
「本当になにも聞いてないのか? ったく、じいさんも仕方ねえなあ」
梅吉さんは一つ乾いた息を吐いてから、
「あのな、ここにいる俺達全員、牡丹とは血が繋がってるんだよ」
私の目を見すえて、そう言った。
「は……? 血が繋がってる……?」
「ああ、半分だけだけどな」
「半分だけ……?」
「だから俺達と牡丹は、腹違いの兄妹なんだよ」
「腹違いの兄妹……?」
へえ、なんだ。私とこのイケメン達は、腹違いの兄妹なのね。ふーん、へえー、なるほどねえ。
謎が解けて、すっきりした。
けど。
「え……。腹違いの兄妹って、血が半分だけ繋がってて……。え……。え、ええーっ!??」
私の口から素っ頓狂な声がもれた。こんな声、私自身初めて聞いたよ。
腹違いって、腹違いって、つまり……。
「そっ。父親は一緒だけど、母親はバラバラってことだ」
私の心の中が分かったのかな、梅吉さんが丁寧に教えてくれた。その上、ぱちぱちと手を叩いて、
「見事なリアクションだったぞ。今までで一番良い反応だ」
と褒めてくれる。
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