初めての女

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◎初めての女 君は僕をいきなり呼び出す。 メッセージを見ると 迎えに来て、五分以内。 あの頃、僕も若かったしバカだから、真夜中の道を原付すっ飛ばしてちゃんと五分以内に迎えに行ったね。あれはなんて店だったろう。僕にはとりあえず、酒飲む所という認識でしかなかったあの店。いつもそこに君は寄り道している。 季節はちょうど真夏で、ちょっと外出るだけの時は必ずサンダル履いてた。だから少し問題があって。原付のセルはもう動かないけど交換は一切するつもり無くて、つまりキックペダルで起動させるんだけどそのキックする足が痛かったのをよく覚えてる。サンダルでのペダルキックは足の裏が痛い。 到着すると、別にすぐ帰るわけじゃなくて、いつでも僕のことをそこの店長やらお客さんに自慢してたね。 かわいいだろ。アタシの彼。まだ若いんだ。いい子でさ。 酔っ払いながらそんなこといつも言ってたっけ。 僕が仕事を聞かれて 雀荘店員ですと言うと、たまに心無い人からバカにされたっけな。僕は別にそんなに気にしてなかった。バカにする気持ちもわからなくはないからね。だけど、いつも気になったのはそれを聞いて君が怒り出すんじゃないかってこと。 実際そんな時はいつも怒って僕の凄さを長々と語り出してたね。 あんたはさ!自分の好きなことだけしてそれで稼ぐことが出来るわけ!?彼はそういうこと出来る人なんだよ? って激しく知らない人にでも噛みついて また、始まった。と僕は思うんだけど。今思うと、君のその怒りは僕を救ってくれてた。 ありがとう。僕のプライド守ってくれてたんだよね。 帰り道は大きな道を2人並んで歩いて。 人目が無い細い道までバイクを押したらそこからは一度キスして、一つしかないヘルメットを君に被せて、二人乗りで帰ったね。 僕らが暮らすあの部屋には 牌と酒しか無かったけど。 あれはあれで幸せの形だったよ。 君は今幸せにしてますか。 僕は今も幸せだよ。 ありがとう。僕と付き合ってくれたこと、感謝してると伝えたい。あの子との時間があったから今もある。 初めて付き合ったあの子は 今も元気に酒を浴びているのかな。さすがにもうあの頃のようには飲んでないのだろうけど。 今も幸せでいてください。 了
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