番外編

6/7
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
「僕とのことも、すぐに終わらせるつもりですか」  じっと見上げてくる目に、もう怒りの感情は含まれてない。  代わりにそこには、不安の色が浮かんでいた。  その瞳の奥にある正史の心に訴えかけるように、じっと見つめ返す。  なにを不安に思うことなどあるのか。  歴代の恋人たちと正史が、俺の中で同等の価値であるはずがないのに。 「終わらせるつもりなどない」 「でも」 「あなたこそ本当は、言われなくてもわかっているだろう」  この俺が本気を出して求愛しているのだ。  伝わらないわけがない。 「俺に特別に思われている、ということを」  ゆっくり言葉を紡ぐと、正史の目から不安の色が消え、嬉しそうな、だが同時に困惑しているような不思議な表情になる。  俺は正史のこの複雑な顔が好きで、何度もこうやって困らせたくなる衝動に駆られる。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!