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「僕とのことも、すぐに終わらせるつもりですか」
じっと見上げてくる目に、もう怒りの感情は含まれてない。
代わりにそこには、不安の色が浮かんでいた。
その瞳の奥にある正史の心に訴えかけるように、じっと見つめ返す。
なにを不安に思うことなどあるのか。
歴代の恋人たちと正史が、俺の中で同等の価値であるはずがないのに。
「終わらせるつもりなどない」
「でも」
「あなたこそ本当は、言われなくてもわかっているだろう」
この俺が本気を出して求愛しているのだ。
伝わらないわけがない。
「俺に特別に思われている、ということを」
ゆっくり言葉を紡ぐと、正史の目から不安の色が消え、嬉しそうな、だが同時に困惑しているような不思議な表情になる。
俺は正史のこの複雑な顔が好きで、何度もこうやって困らせたくなる衝動に駆られる。
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